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歯車の日常

ある木曜の昼下がり。午後からシフトに入っていた。
いつもは朝の9時から入っていたのだが、
この日は18時からの人が出られないということで
13時から閉店まで自分が入ることになった。


「こらあっ!」

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うちのバイトリーダーの声が聞こえる。
うちには18禁コーナーがあるのだが、
そこに侵入したエロガキを追い出しているのだ。
もうこのバイト入ってから1年経つので、慣れてきたのだが、
初めてその罵声を聞いたときは何事かと思った。
次第に、これがうちの店の名物なんだと認識するようになった。

いつも、朝から入ってるから、昼から入るとどうも気合が入らない。
ここは学生街で普段は若いお客も多いのだが、夏休みだからか少ない。
その代わり、親子連れが多い。普段は母親と子供のセットで見かけるのだが、
この日は父親もいるパターンが多い。

世間は夏休みを利用しての旅行や家族サービス。
俺は休みもお金もないので、
何の気もかけずに海に行く若者の気分など味わえるわけもない。

あぁ、突き刺すような日光を照り返しては輝く海。弾けるような黄色い声。埋め尽くす人ごみが砂浜を埋め尽くすが、都市にはない開放感がそこに広がっている。
そんなものとは無縁だ。

今、俺の視界に映るのは先ほどのエロガキが懲りもせず、ウロウロしてる姿だ。
絶対に18禁には近づけないのだが、彼の情熱はそんなことおかまいなしだ。
まさに彼の青春がそこにあるのだろう。

俺たちは悲しいサガを持った生き物だな、少年よ。
今の君はここで惨めにレジに縛られてるおじさんと変わらないぞ。

おっと、お客が来た。はいはい、いらっしゃい。

レジにはあまり客が来ず、仕事もなくて、
他の店員と猫の話とかして時間を潰してた。
しばらくして、昼のシフトの人が去り、夜のシフトに入り、俺は残る。
普段ない光景だが、何回か入ってるので、慣れてはいた。

夜は普段からお客が少ないが、この時はそれに輪をかけて少なかった。
やることは在庫の整理など片付け業務がメインになる。
この時は俺が初めてやる作業が出てきたので、
バックヤードで教えてもらうことになった。

が、それもすぐに終わり、また退屈な時間が流れる。
「あたし、蜘蛛が苦手で、小さな蜘蛛いるじゃないですか?あのジャンプするやつ。
あれがダメで・・・。デカいのは平気なんですけど」

俺「デカい方が嫌じゃないかな・・・」
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などと、無駄に夜シフトの女の子と雑談をしてた。
この歳で、20歳の子と話せるなんて役得すぎる幸せをかみしめながら会話してた。
でも、女子は理解と共感を求めていて、
反論は求めてないというネットで得た異性との会話セオリーは
上記のように完全に無視していた。
振り返ると、本当にモテない要素しかない自分に気がつく。

レジの交代の時間のなったので、ヘラヘラしながらバックヤードから出た。
自分たちがいない間にレジをやっていた人からは長すぎると怒られたが、
俺は代打できただけだから知らないし、お客も少ないからいいでしょと思っていた。

それから棚の整理とレジを交代しながら、時間が過ぎていった。
朝昼と違って、仕事も少ないことからモチベーションもそこまで高くない。
忙しさもあって、昼間は店の在り方に疑問を持つこともなく、
ちょっと盲目的に信じてる節がある。
夜は余裕がある分、店のおかしいところに気づく。

いろんなところを見てきたけど、
やっぱり組織というのは何かしらおかしいところがある。
でも、周囲の人間が宗教のように信じてしまっている場合、
それを吐露することはできない。

逆に夜の人はそれがよくわかっている。
一応、朝昼の人はそういう認識でないことは伝えておいた。
俺自身もこのバイトにずっと身を寄せてるわけにいかないから、
思いを委ねても仕方ない。早く違う仕事を見つけないとな。

店を閉めたあと、夜シフト終了後、唯一の楽しみであるラーメン屋に向かった。
お盆だからやってないかと不安で仕方なかったが、運良くやっていた。偉い。
店に入り、大盛りのつけ麺を頼む。天国だ。
金に余裕があるとこれにビールをつけるとさらに幸せになれるのだが。

食べ終わりかけると少し胃がが苦しくなり、年を感じて悲しくなってきた。
そして、翌日は朝からシフトが入っている。仕事と食事風呂睡眠だけの2日間だ。

翌朝になると、冷蔵庫には米がなかった。
喜びのラーメンの次は悲しみの牛丼を頂き、バイト先に向かった。