2つの掛け持ちバイトを辞めてみて

そして、俺はニートになっていた。

 


去年の12月の半ばから今年の2月の半ばまで二つのバイトを掛け持ちしていた。
1つは近所の販売のバイトで、2つ目は雑誌編集社での雑用。
本当なら、雑用の方が週3日で10~18(休憩1時間)で日給9000円(交通費自己負担)と
販売のフルタイム時給950円よりよかったので、雑用バイトの方を続けようと思っていた。
なお、土曜のみ9~13時だが、他の3日間は昼間フルタイムで入っていた。
つまり、週で丸一日の休みはなかった。

初めに書いておくが、辛すぎてやめたという類ではない。
両方のバイトを続ける理由があるなら全然続けられたし、
そもそも辛くない。雑用の方はデスクワークだったので、
いらない緊張感を除けば楽だった。

だから、世の中には子育てして、毎日働いて、家事してる人がいるのに…
なんていうのと比較する気はない。大変だと思いますよ。
ただ、この先、「大変」という苦労を示す単語を出すが、
それは俺の中で大変ってことで、世間一般の大変よりも甘いものであること示しておく。

12月の末には販売のバイトはシフトを削る相談をしていた。
ちょうど新人募集もしていたため、そこで来た新人に任せてもらえればかと
思っていた。なお、新人は来る予定ではあった。

ところが、店長に「定着するまで待て」と言われた。
そんな半端な日数を新しく来る人に任せられないとのこと。
俺としてはその人にもともと希望していた曜日に加えて、
俺の抜けた分も入るように交渉すればいいのではと思っていたが、
店長の中では「追加の分は新しく来る人にする。しかし、
そんな半端な日数(俺の抜ける分)だけの募集は無理」
となっていた。
つまり、新人のシフトの拡大の交渉はできず、新しい人も迎えられない
とのことだった。本当はその来る予定の新人以外も応募があった。
だが、その応募はどうやら断ったようだ。

取りつく島がなく、相談に応ずる頭もないところから俺は
もう販売のバイトは辞めるしかない、と決意した。

そして、雑用の方。こっちは辞める経緯まで書く。
志望動機は編集の仕事をしたかったからということで入った。
即日で採用されたものの、編集らしい仕事は皆無で、
電話番と発送業務、データ入力が主だった。
別にそれでも最初のうちは仕方ないと思っていた。
ところが、ある日

「君、何のために入ってきたの?」

と編集部の人がアンケートの処理をしている俺に声を掛ける。

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やりたいことあって、来たんでしょ?何ができるの?と。
挙句には

「これだとね、申し訳ないけど、“お断り”するしかないよ?」

とのこと。
こっちとしては逃げで雑用してるのではなく、今やれる業務をやってるだけなのだ。

それも、その編集部の人(即日採用した本人)の指示だと思ってやっていた。

ところが、話はそうではなく、

・編集部の人以外の指示は編集部の人は知らない。
・編集部の人を経由して、業務をしなければならない。
その人以外の指示を受けたら、報告に行かなくてはいけない。

らしい。こんな簡単なことくらい言ってくれてもよかったのでは?
と思うが、きっと、社会人というものはこれくらいのことは
言われなくてもやるのだろう。

無能な俺は自動的に業務の流れができてるものだと思ってたよ。その方が効率的だし。
説明不足という瑕疵はないのだな。

だが、風潮として、

・わからない仕事、初めての仕事は聞きに来い。
・考えてわかることはいちいち聞かないで。
・他の人に聞いてできることは他の人に聞いて。

というものがある。
少し考えるとわかるが、この3つどれを選択しても
もれなく怒られるのである。
もちろん、運よく選択肢に正解することもあるが、
半分くらいダメな方を選択してしまい、1月の後半には
胃の様子がおかしくなっていた。

この条件が採用から10日くらいには求められていた。
厳密には10日の間に少しずつ条件が加わっていたのだ。
ただ、文章にして上記の「・」以下の文章が5つだ。
それくらいのこと1日目に軽く言うか、文章にできなかったのだろうか。
できないなら、そのことを認められなかったのか。

フォローするなら編集部という性質上忙しく、少人数だ。
仕方ないところもあるが、あとからグチグチ言う時間で何とかならなかったのか?
終いには

「この仕事、俺の方が早いよ?」
「もう月曜だけにしてもらおうかと思う」

となってた。なお、前にも途中で辞めるように遠まわしに言われてたのだが、
その時は続ける気でいたので、続けたいと言った。
これが後から面倒なことになる。

2月の初め、バイトの募集を探すととある小さな出版社が編集の募集をしていた。
少人数で、俺も読んだことのある媒体を手掛けていたので、
なんとなく運命を感じ、行きたいと思った。

俺は何とかして、雑用のバイトを辞めることを決意した。

ここに関しては、上記のような扱いなわけだし、戦力外が追放することなく
自分から放出されるのだから、問題ないだろうと思った。
念のため、いきなり辞めるわけだから、家の事情ということにしておいた。

ところが、意外に揉めた。編集部の人に話すと

「急に⁉何とかならないの?月曜だけでも」

となり、家の事情と話すと、家族構成や状況まで聞こうとした。
さらに試用期間過ぎたら失業手当目的で辞めるやつがいるとか、
出版業界はいい加減なのが多いとか、
生活保護の方が俺より金もらってるなど、
思いがけず、本音を聞くことができてしまった。

詳細な理由は家の事情と急なことでということで逃げたが、
それでも、俺も片親だとか、東京の人はすぐ辞めるなど
聞きもしない、個人情報を出してきて、お前の都合なんて
軽いものと言いたげであった。

実は月曜は読者からの問い合わせが休日明けということで多く、
そこだけでも都合よく使いたかったようだ。
しかし、編集のバイトが週5日なら、その日も出られないので、
こちらが「お断り」するしかなかった。

いろいろ話すと

「どーせ、合わなかったんでしょ?」

と言い出す。まぁ、雑用に合う合わないがあるかわからないが、
合ってる気はしないので、合わないんじゃないでしょうか。
編集部の人はあまり、俺とは会話すらしなかったからマッチしてるかは
ちゃんとわかってないのでは?

おそらく、雇ってみたものの雑用だけだとそんなに仕事は多くなく、
それ以外の仕事はないし、教えてる暇がない、
というのが本音ではなかろうか。
そこで月曜だけ都合よく使おうとしたら、辞めると言い出して、破たんして、
困ったのかと。

「だったら、前に諦めるか聞いたとき、辞めればよかったのに」

これが面倒なことになった、元凶だろう。
ただ、それがあっても、今までの扱いから考えて、問題はないと思った。
暇がないと断るごとに言ってきたが、結局辞めることになる、この不毛な
話し合いは就業時間から40分間行われた。仕事は互いにしていない。

最後の出勤日、入れ替わりで追加の新人が来た。
俺が急きょ辞めることで意図せず、追加ではなく補充という形になったようだが。

俺の最後の仕事は雑用の引継ぎだった。もうどうでもよかった。
しかし、信条として適当はかましたくないのでしっかり教えるつもりだった。
それは、適当な教えを受けた、編集部へのちょっとした意趣返しでもあった。

事前に作成した簡単な業務フローチャートを渡し、余白にメモして、
実用化するように新人に促した。
なお、この新人は男性で年上のようだった。マックが多少、使えるらしい。

一緒に業務を行いながら教えることにした。
一応、編集部の人にもそのように指示があった。

最初は簡単な業務だったので、口頭だけで済んだ。
にしても渡したフローチャートは使う気配もなく、

放置でメモも取ろうともしない。

何かを感じながら、次の業務を教える。
少し、メモがいる業務だと思うが、やはり、メモは取らないし、
フローチャートは俺が持ってる状態だ。
しばらくすると

「一服していいっすか?」

そんなに業務もキリのいいところではないが、
そのように言われる。止める権利もないのでOKはした。

いつの間にか12時になっていた。他の人たちは昼休みに入る。
すると、

「昼休憩、行っていいっすか?」

と、新人に言われる。
えらく自分の休養にだけは積極的だ。できれば、簡単とはいえ
業務にも同じくらいかその万分の1でも積極性を見せてほしかった。

これも断る権利はなかったので、OKを出した。

ここで問題なのは俺も一緒のタイミングで休憩を取り、
それから業務をするべきだが、休憩で人がいなくなり、
電話を出る人間がいなくなる。

仕方ないので、俺は残り、新人を休憩に行かせた。

そして、新人が戻り、休憩をどうしようかと考えていた。
休憩を取らないのも手だと思っていたが、そこまでして、
業務をするモチベーションもなかった。
幸い、他の人がやらせたい仕事があるとなり、その人に任せて休憩に
行くことにした。

休憩から戻るとさっそく電話が鳴り、編集部の人に対応してもらおうとした。
電話が保留中、編集部の人が来て

「お前!アイツ(新人)ボーっとしてたぞ⁉任せたよな⁉」

と、まくし立ててきた。
俺は任したことを伝えると

「知らねぇよ!!なめてんのか?休憩も合わせていけよ!」

まあ、確かに先ほどのどれを選択してもキレられる条件をどれも
満たしてなかったし、休憩も俺だけで行った。
この時点だと今更なのだが、本当に自身の監督不行は認めないのだなと感じた。
多分、ボーっとしてたのは嘘だと思う。仕事はあったのだから。
俺を責める口実に過ぎない。

あと、休憩を同時に行く指示は受けてない。多分、合わせなきゃとは思ったが。
なお、保留のメロディーが終始、鳴り続けていた。

この後も

「会社とか関係なく言わせてもらうぞ。なめてんだろ?なめてんのか?」

と、ひとつの単語だけで詰められた。
俺も「なめてないっすよ」と長州小力の偽物みたいな返事しかできなかった。

雑用を完璧に引き継げと、最後までこき使おうとした。
俺が入ったばかりの時とは全く持って様子が違う。

ちょっと面倒な業務に入ったが、意地なのかメモを取らず、
余白にわかるように書くよう再三、言ったが、

「次やりますよ!」

と、何故か強気で返された。そして、同じ業務を3度目で同じミスをしていた。
この地雷を残して辞めていけるのが唯一、愉快だった。
ふと新人のキーボード使いを見ると、人差し指でエンターを押していた。
このとき(マックの経験がある)という紹介の言葉が想起された。
もちろん、フォトショだよな…PCだよな。


最後の終業時はスムーズだった。

俺「おつかれさまっしたー」編「…はいー」

で、終わった。

販売の方のバイトはそこから1週間後の2月の最後で終わった。
辞めることは今年の1月5日に伝えていた。メールも事前にした。
すると、

「新人の研修がある」
「正式には3月から入る」

と言われた。だから何?って話だが、
近所のよしみでこれからも利用したいし、
円満に終わらせたかった。

だから、2月いっぱいまで働いた。


お人よしだと思う?

そのおかげか、1年と7ヶ月いたこのバイト先には惜別の念を送られた。
一方、雑用バイトの方は「なめてんのか」というお言葉をいただいた。

給料はがっちり入ったが、その大半は滞納していたクレカのローンに
消えていった。
そして、出版のバイトの方は面接の予定を調整している間、
採用者が決まり、落っこちた。