人生は霞の中を歩くようなもの
東京ドーム一個分の東京ドームを目の前にしている。
深夜、タクシー以外の帰るための交通機関を逃し、佇んでいた。
※外が暗くても心に光を - いつも空ばかり見てるから・・・の続き
ネオン街でもないただのビル街のこの街は車のライトと街灯で輝いている。
終電は過ぎたが、給料日近くで金はない。星の見えない夜空は僕の心象風景?
さぁ、今こそ、心に太陽を。
災害マップなしでも都心なら帰れる自信はあるので
地元までの道順はわかっている。
そして、その距離、時間も。知らない方がいつか着くっていう希望が持てたかも。
昼間から知人と歩いて、終電を逃すのはなかなかダメージが大きい。
いくら金欠とは言え、タクシーくらい使ってもいいが、
後楽園から使うのは嫌だったので、
ちょっとでも歩いて、せめてタクシーを使う距離を縮めようと考えた。
この時が冬でなくて良かった。冬の夜空を眺めながら歩くなんて、
風邪引きたいとしか思えない。
まぁ、長距離歩いてるとあったかくなるから関係ないけどね(経験済み)
道を知っているので、後どのくらいまっすぐ歩き続けるのかがわかっている。
長い・・・。
あんまり疲れた感じはないので、ただただ退屈だった。
名案を思いついた。
人はそもそも同じ道を同じ風景を見ながら歩いてるから
精神的に疲労を覚えるのだ。
道は遠回りになるため変えられなくても、風景なら変えられるのでは?
風景は視界から入るものだ。そして、俺は眼鏡だ。ならば?
そう、メガネを外せばぼかしがかかって、街頭なども混じって、
ファンタジーな風景を楽しめるんじゃないか!?
天才だ。早速、眼鏡離脱!!いざ、新しき世界へ。
人は通ってないので、歩きやすい。障害物は見える程度の視力なので問題ない。
うーん、ファンタジーというかモヤの中を歩いてるような気分だね。
でも、足はしっかりと硬いアスファルトを踏みしめている。
意外とメガネなしでも歩けるもんだね。
・・・。
・・・・・・。
その、あれだな。視覚情報は確かにいじれたんじゃないかな。
でも、実際の風景はそもそも変わってないでしょ?
ぼやーっとした世界をぼーっと歩いてる。
ここが今どこ歩いてるかくらいわかるし、
なんなら、向かい側の通りにあるマクドナルドだってわかる。
メガネを外したくらいで気分転換になってストレスが軽減されるなんて
思ったら大間違いなんだよ!バーーーーカ!!!
あー、スーパーの入荷の様子まではっきりとわかるよ。
視界がぼやけてるだけでな。
それでも、腹が立ったんで池袋まではそのまま歩いた。体感速度は何も変化ない。
流石にそっからは危険だったから眼鏡装着。無駄な時間を過ごした。
メガネ越しに見る池袋は異国人のたむろする光景や
やる気のないB級ガールズバーのねぇちゃんたちの姿など
日本の首都の姿をくっきりと映していた。
そろそろタクシーを使おうかとしたが、もう一駅頑張ってみようかと。
朝帰りの時によく使う松屋を見ながら、決心した。
駅に着いたけど、まだ歩けそうなのでもう1駅。
・・・地元で酒を飲み直そう。歩いて、ビールだ!
地元近くで調子に乗った俺は途中でいつもとは違う道で曲がり、
うろ覚えで地元まで行こうとする。
ここまで来るとハイなので、たまたま合ってたその道に「しゃあっ!!」とガッツポーズを上げた。
結局、地元まで歩き、飲み屋でビールを飲みました。
ビール史上最高クラスの飲み味だった。今日生きてきた意味がここにある。
元はといえば、さっさとサイゼリヤから出れば、
こんな目に遭うこともなかっただけの話。
メガネを取ってもなんの変化もなかったし。
モヤモヤした中、歩いた意味はビールを飲むまでなかった。
でも、ビールがこの長い夜に意味を持たしてくれた。
人生ってきっと白紙なんだ。だから、自分で描いていく必要があるんだ。