超未来型怪獣見世物小屋
音で振動するほど、やばいスピーカーを備えている映画館がある。
そんな話をバイト先で聞いた。その真偽を確かめるべく、
公開して間もなかった「シン・ゴジラ」を鑑賞しに行った。
場所は立川のシネマシティ。映画が好きな人の間ではすごい有名な場所らしい。
自分は映画はたまに暇つぶしで行く程度なので、
その話を聞くまでは全くわからなかった。
地元から立川というとちょっと遠いイメージがあったのだが、
快速を使うとそんなに遠くないとのこと。
そう聞いててもなんだかんだで1時間以上かかったら困るので早めに行った。
結局、バスと電車を使ったのだが、45分くらいで立川に着いた。確かに早い。
快速の飛ばし方がすごく、立川まで5駅くらいしか止まってない気がする。
この日は花火大会があるらしく浴衣姿の人々でごった返していた。
駅までは確かに近かったが、駅から映画館までの距離が遠かったらどうしよう。
しかし、昼間からこんなに人がいるのか。
押し寄せる人の波、人の波・・・。
家族連れを避けて、親子連れとすれ違って、手をつないでる浴衣カップル、
いちゃついてるカップル、腰に手を回してるカップルが・・・。
あああああああああああ、もう嫌!
貴様ら、今宵、花火の原料となって、浮世から散るがいい!!
地上に幸せの華を咲かすな。咲き誇るは夜空を彩る花だけで結構だわ!
大体、こんな時間に・・・。
興奮しました。失礼。
駅から何とか脱出できたので、映画館を探すことに。事前情報は北口にあるということしか知らんかったのであとはその辺に立っている地図を見て行くことにした。
公開間もなく人気の映画だったのですぐには観られないとは思っていた。とりあえず、
チケットだけ買って、あとは立川周辺を探索するつもりでいた。
ビックカメラやディスクユニオン、大型書店にスーパーなど駅周辺に生活と
趣味に必要な店が集中している。これは住める。
祭りの日なので串焼きやビールを売っているで店が多かった。ピザも売っていて、
あらゆる手でカロリーを摂取させようとしてくる。
暑かったのでビールくらい買ってもいいのではと誘惑に負けそうになったが、
無駄な出費は抑えたかったし、映画はシラフで観たいという信念があったので、
手を出すことはなかった。
何より、誘惑に打ち勝ってからの映画は空腹時のラーメンと同じでより高い満足を得られるはず。
駅の降りる方面くらいしか分からなかったが、
意外と回り道することなく早めにたどり着けた。
ここがシネマシティか。じゃあ、早速、
え、「シン・ゴジラの販売はシネマ・ツーです」という案内が。ここはシネマ・ワン。
チケットも買えないのか。せっかく、炎天下から逃れられると思ったのに、また歩くのか!嫌だ!!
仕方ないので、さっさと行くことに。早くしないと席がなくなるかもしれない。
急に決めたことなので予約はしてなかった。
溶けそうになりながら、歩いているとモノレールが見え、
すぐ近くにシネマ·ツーはあった。
予想より近かった。
ここでもピザとビールが俺に語りかけてくるが聞こえないふりをする。
シネマ·ツーの中に入りチケット売り場で席を確認すると
観やすい席は殆ど埋まっていた。
辛うじて最前列から2番目の席は空いていたのでそこを選ぶことに。
チケットを購入したこの時点でPM3:00くらいだった。
上映時間はPM8:20なのでそれまで暇をつぶすことにした。
ラーメンを食ったり、
ビックカメラで子供に雑な戯れをを受けているペッパーくんを見たり、
上映までに一瞬でも花火を見ようと人並みに飛び込んでみたりしてるうちに
ようやく時間が過ぎていった。
なお、花火は祭りの行われている公園ではなく上映時間が迫ったため諦めて、
戻った途中、映画館の近くで見ることになった。
歩いた時間を呪いながら、花火を憎らしげに見た。
ちょっと花火を見事に思ってしまった自分にがっかりした。花火なんて花火なんて。
映画館に戻り、喉の渇きに負け、ペプシを買ったり、
衝動的欲望に負け、買うつもりのなかったパンフレットを買い、ホールに向かう。
上映10分前に扉が開き、それと同時に入ったため、席は座りやすかった。
座って待っていると、男性二人が話しながら自分の席の近くに座る。
「いやぁ、今日初めてなんですよね」
「おー、初めてが、シン・ゴジラなら来てよかったよ。ここのスピーカーはね・・・」
と、2人組みの内の1人によるシネマシティのスピーカー講座が始まった。
この光景はどこかで・・・。
あ、バイト先だ。バイト先の人に俺もこんな感じで話を聞いたんだ。
全く同じこと言ってやがる。
やっぱり、花火を無視してここに来るぐらいだから、気持ちは一緒だな。
客層も濃い気がする。
この映画館では
6,000万円という破格のラインアレイ・スピーカーがスクリーンの横についていて、
重低音を無駄に必要以上に過剰表現する高性能という「Meyer Sound社 1100-LFC」というサブウーファーが下に設置してあり、
高い音質を提供するために「KICリアルサウンドシステム」を備えている。
ベルエアー 超高性能リアルタイムホーンスピーカーシステム LX-3000 | ||||
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冒頭で示した通り、映画にも映画館に全く詳しくないので、
これが映画館ならどこにでもあると思っていた。
まぁ、個人宅じゃないんだし、
そりゃ電機屋で売ってるスピーカーとはわけが違うでしょくらいの感覚だった。
だが、そんなもんではなく、
1,2本分の興行収入を吹っ飛ばすくらいの費用が掛かっていたそうだ。
もし、今後、動員が少なかったら、ただの負債になってしまう。
異常なまでの映画愛だ。
そして、通常この装備をしているのはコンサートホールなど
音を専門としている施設だ。
音を芸術品として提供するために作られたものなのだ。それを映画で!?
エロゲを学校や会社の巨大プロジェクターでやるより馬鹿げている。
いよいよ、映画が始まる。ここではスピーカーの凄さを集中的に伝えるため、
映画の内容は断片も出しません。
小型船舶が座礁するシーンがある。・・・!!こ、これが服が震える振動か!すげぃ!!!
うるさくて鼓膜破れたらどうしようかと思っていたけど、そういうのじゃない。
うるささで言えば、ゲーセンやパチンコ屋の方がよっぽどだ。
でも、そういうのじゃない。
なんだろう。言うなら、耳で聞くというより、体で感じるというか。
ちなみに俺が座った席は位置的に見上げるような感じで観るのでちょっと首が辛い。
なお、このスピーカーたちを購入したあとの興行収入は・・・うわぁ!
ゴジラのしっぽだ!!
重い足音ともに太く空気を巻き込むしっぽの揺れ。
・・・・・・・・・・・・・・・・い、生きてる?
場面が切り替わり、自分の呼吸音を感じる。あれはやばかったな。
で、興行収入なんだけどね・・・。
あ、ゴジラが・・・。え、何だ、口が・・・。
放たれる光線。あとに続く爆風に破壊の嵐。吠えるゴジラ。
破壊、咆哮、明滅、破壊破壊破壊。
ああああああああああ!!!し、振動とそんななな生ぬるいものじゃない!!!
音なのに薄い毛布に包まれるのような感じになる!!!
つ、包まれる!?いや違う!!音に拘束されてる!!!!
ま、また吼えてる!!ししししし死ぬぅっ!!!
音、破壊音、咆哮以外に何も感じない!感じることが許されない!!
俺は音感だとかそういう感性的なものが0な人間だが
そんな0センス野郎でもすごいことだけは
分かる。これが表現したいことなんだと!!
奥底に秘めているメッセージを感じて、作品の世界観に触れてもらえば、
とかそんな甘いもんじゃない!ぶつかってくるんだよ!表現が!!破壊が!!!絶望が!!!!
巨大津波を何10回もかぶるようなもん。本当はもう「ああああああああ!!!!」しか言えないんだけど、頑張って書きます。
ハァハァ・・・。これは映画好きとかオタクとかそんなんじゃなくても、
無理やり素晴らしさが分かる。「音はすごいけど・・・」とかそんなんじゃないから。とにかく、やばい。
ちなみにスクリーンは普通です。
あ、そうか。興行収入なんだけど、しっかりと元は返せたそうだ。
いや、それどころか現時点だと大成功なんではないでしょうか。素晴らしいよ、本当。
最初は前の席で観づらいかと思ったが、
結果的に相手はゴジラだったので見上げる感じがリアルで良かった。
それにしても、死ぬかと思うほどの絶望が何回もくる。これは死んだなと何回も思う。
恐怖というか絶望。あれがシネマシティか・・・ガッジーラか・・・。
なお、後日、バイト先の人に感想を伝えたら、「ガルパンの次にすごかったね」とのこと。おおぅ。
シン・ゴジラも戦車から戦闘機まで見放題だから、好きな人は是非。
シネマシティで見ると大体の人がガルパン観たくなるだろうけど。
このやばい上映は「極上爆音」と銘打たれている。
確かにそれ以外の表現がわからないほどの音でした。
このあと、浴衣の波に飲まれながら帰ったり、バスがなくなって、
ちょっと歩くことになったりするんだけど、もう疲れたので以上です。
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